西尾維新 伝説シリーズのススメ
私の好きな作家の一人に、西尾維新という人が居ます。
ラノベ作家だの、そうではないだの言われていますが、本人はどっちでもいいと思っているらしいです。
そもそもラノベかそうでないか、ってどこで決まるんでしょうね。
ちょっと調べてみましたけど、結構曖昧なようです。
ライトノベルを発行しているレーベルから出ている、とか挿絵がある、とか作者が言及している、とか。
そうすると西尾維新はライトノベル作家でもあり、一般小説の作家でもあるということになるのでしょうか。
挿絵がある小説も書いてますし、無いものも書いてますしね。
で、今回私がおすすめしたい西尾維新の作品は「伝説シリーズ」。
挿絵がない方の小説です。
全10巻。
一言でいうと、ぶっ壊れた話です。
気持ちがいいくらいぶっ壊れてます。
導入部分を簡単にいうと、一人の少年を秘密組織にスカウトする際、秘密組織の秘密性を守るため、少年の家族、少年が通っていた学校の生徒、関係者は皆殺しにされます。
その秘密組織が戦う相手は、なんと地球です。
「地球を守るために戦う」んじゃなくて「地球と戦う」んです。
物語が始まるときには、すでに地球の「大いなる悲鳴」という音(?)に、人類の2/3が殺されています。
そんな地球と闘う秘密組織のうちの一つが地球撲滅軍というのですが、この地球撲滅軍がまあひどい組織でして。
(他の組織も軒並みひどいのですが)
地球は人類を攻撃するべく兵隊をよこします。
地球撲滅軍は、それを地球陣と呼んでいるのですが、実は地球陣たちは自分たちが地球陣だとは知りません。
自分は人間だと思っているんです。
そしてちゃんと社会で仕事をしながら生活していますし、子供も幼稚園や学校に通っています。
なので地球撲滅軍に囚われたとしても、なんで自分がそんな目に遭うのかわかりません。
目を覆いたくなるような辛酸を極める拷問をされても「助けてくれ!」と叫ぶしかないわけです。
中には「そのとおりだ」という地球陣もいるけど、その後続けて「そのとおりで良いから、もうやめてくれ、許してくれ!」と泣き叫びます。
薬を使っても「知らない」という。
解剖をしても人間と変わらない。
もうどう見ても冤罪としか思えないような状況です。
そういうことを「人類を救うため」という名目でやるわけです。
で、そんな地球撲滅軍にスカウトされた少年の名前は「空々空(そらからくう)」といいます。
この主人公、まともな感情というものがありません。
家族を殺されたときでも、まず思ったのが「この部屋に入ったら、靴下が血で汚れてしまうな」というようなことです。
今まででも「喜ぶべき状況だから喜んだふりをする」というように、周りに合わせて生きてきた少年です。
別に人が嫌いというわけではありません。
ちゃんと人を大事にします。(味方であれば)
でも死んでしまったら、もうそれをただの物体として見ることができてしまうんですね。
こんな組織に、こんな少年が所属するもんですから、そりゃもうひどいことになっていきまして。
印象に残っているのは、幼稚園児の中に地球陣の子供が混じってるから、幼稚園に乗り込んですべての幼児と職員を皆殺し、とか。
エグいシーンばっかりが印象に残っていますけど、もちろんそれだけで面白いわけじゃありません。
地球撲滅軍はあくまで地球を倒すためにこうしたことをしているのであって、そこはブレていません。
地球を倒すためなら何をしてもいい、とおもっていて、それがまかり通ってしまうところが面白いわけです。
2巻目(悲痛伝)以降では、舞台が四国に移るんですけど、物語が始まる時点で、四国の住人は全滅しています。
四国にも秘密組織があって、その実験のせいで全滅してしまいました。
でも、世界を救うためなんだから数百万人の命くらい・・・という考えなんですね。
そして1巻で生き残った空々空は、この四国に乗り込んで、その実験に巻き込まれていきます。
そこで、感情が欠落している人間ならではの機転や行動を活かして、ここでもまたエグい活躍をしていくことになります。
なお、この四国編では、私がものすごく好きなキャラクターである「地濃鑿」が出てきます。
私は物語のトラブルメーカーって二種類あると思っているんです。
読者をイライラさせるタイプと、大笑いさせるタイプ。
地濃鑿は確実に後者です。
感情がない空々空ですら、この人物については嫌気をさす、というレベルのトラブルメーカー。
この人物を、他のキャラがどれだけ嫌っているのかということを表現する技法は、さすが西尾維新と言ったところです。
とまあ、こんだけエグくて、話が面白くて、笑えるところもある伝説シリーズ。
西尾維新に興味があるのであれば、絶対に外せない作品であると思います。
興味があればぜひ、というか、ぜひ興味を持ってほしいところです。
それでは。
イッシキでした。